記事: 「ADHDの困りごとをバッグで解決!~日常生活を「ちょっと楽にする」ヒントが見つかる一日~」
「ADHDの困りごとをバッグで解決!~日常生活を「ちょっと楽にする」ヒントが見つかる一日~」
~見えるストレスを可視化して、心も軽やかに~

皆さん、こんにちは!先日開催された「ADHDの困りごとをバッグで解決!」イベントの模様をお届けします。このイベントでは、発達障害の専門家やバッグのプロフェッショナルが集まり、日々の困りごとを少しでも解消するためのヒントが満載でした。
南先生の発表:「受け入れる」と「改善する」のバランス

カウンセリングルームすのわ代表の南和行先生は、ご自身もADHD当事者として、計画は立てられても実行が難しい経験についてお話しされました。
「レポートに取り組むべき時に部屋の掃除をしてしまったり、本を分類したりして結局大きな問題になる...」と笑顔で語る南先生。講演依頼を受けた時も「自分には無理だ」と最初は思ったそうですが、「不完全な自分でも日々楽しく過ごせていることを皆さんに知ってもらえれば」と思い、AIを活用してアイデアを整理するなど、自分なりの工夫で乗り切られたそうです。
【受け入れるポイント】
- 自分の脳の特性を理解する
- 自分に合った職場や環境を選ぶ
【改善するポイント】
- 認知行動療法などのスキルを身につける
- 環境調整を行う
- ライフスタイルの変更(運動など)も効果的
「どちらかに偏りすぎると、自己否定やプレッシャーになってしまいます。『完璧じゃなくてもいい』という土台の上で小さな改善を積み重ねていくことが大切です」と語る南先生のメッセージに、会場からは多くの共感の声が聞かれました。
西原先生の発表:バッグパンパン問題の解決策

整理収納アドバイザーの西原三葉先生は、自身も発達障害当事者としての経験から、バッグパンパン問題(バッグの中がごちゃごちゃになる問題)の解決策について実践的なアドバイスを提供されました。
「物と色の関係性を意識して、可視化することがまず大事です」と西原先生。特に強調されたのは「使用頻度の高いものを上に、低いものを下に」という収納の基本原則。
【西原先生のバッグ整理テクニック】
- 透明ポーチを活用して中身を見える化
- 使用頻度に応じた配置を心がける
- 似たようなものはグルーピングする
- 適正量を見極める
「完璧を目指さず、使いやすさを優先してください。自分を責めないで見ると、自然と使いやすくなります」という西原先生の言葉に、多くの参加者が頷いていました。
中島先生の発表:時間管理と認知行動療法でADHDをサポート

時間管理とADHDの認知行動療法のスペシャリストである中島美鈴先生は、福岡生まれの臨床心理士・公認心理師で心理学博士(九州大学)です。肥前精神医療センター、東京大学大学院、福岡大学などでの勤務を経て、現在は中島心理相談所所長を務めています。
「ADHDが生きやすくなるためのヒント」をテーマに、「仕組みで解決、根性×」という重要なメッセージを中島先生は発信されました。長年の研究と臨床経験から、ADHDの時間認知の特性や先延ばし癖について科学的な知見を交えながら解説されました。
「ADHDタイプの大人のための時間管理ワークブック」や「働く人のための時間管理ワークブック」など、52冊もの著書を持つ中島先生ならではの実践的な時間管理術が紹介されました。
【中島先生のタイムマネジメント術】
- ADHDの「時間感覚の歪み」を理解する
- 環境設定や仕組み化で先延ばしを防ぐ
- バッグの"あるある困りごと"を仕組みで解決する
- 「できない自分」を責めるのではなく、「どうしたらできるか」を考える
中島先生は「認知行動療法の観点から見ると、ADHDの特性は『できない』のではなく『別の方法が必要』なのです」と強調されました。特に時間管理においては、ADHDの方が抱えやすい「時間の見積もりの難しさ」に対する具体的な対策を紹介されました。
また、自身が手がけたADHD成人への時間管理グループ治療の研究結果も共有され、「集団でのサポートが個人の行動変容に効果的」という知見も披露されました。中島先生のNHKあさイチでの話題など、メディアでも注目される実践的なアドバイスに、参加者は熱心にメモを取っていました。
バッグ研究家 林氏の発表:KABAGリュック開発ストーリー

婦人バッグをデザインして20年のキャリアを持つ林氏は、KABAGリュック開発の裏側を語ってくださいました。
「以前開発した『時短リュック』への反響がきっかけでした」と林氏。発達障害の方から「このバッグで自信が持てるようになった」というメッセージを受け、今回のADHD特化型バッグ開発に着手されたそうです。
約600のアンケート意見から、以下の共通する困りごとが見えてきたとのこと。
- 「物が見つからない」
- 「無理に使わない」
- 「不安が募る」
- 「見えないと物がないのと同じ」
これらの課題解決のために、KABAGリュックでは以下のポイントにこだわったそうです:
- 見やすいポケット構造
- 必要なものを取り出しやすい設計
- 忘れ物をしにくい構造
- ラベリング用のシール付属
「開発で特に難しかったのは『見える』の定義が人それぞれだったこと。素材や色の選びも大変でした」と苦労話も披露してくださいました。
参加者からの質問にも丁寧に回答!

Q: ADHDの特性は仕事で困ることが多いです。バッグ以外にどんな道具が役立ちますか?
A: 南先生から、集中力をサポートする「タイムロッキングコンテナ」と、忘れ物防止に効果的な「Bluetoothトラッカー」が紹介されました。「特にスマホに飛びつきやすいADHDの抑制機能の弱さには、タイムロッキングコンテナが効果的です」とのこと。
Q: 忘れ物や落とし物が多く、「またやらかすのでは?」と不安になります。どうしたらいいですか?
A: 南先生からのアドバイスは2つ。
- 自分を責めず、友達に話すように優しい言葉をかける練習をする
- 「ミスをゼロにする」より「ミスした後の対策」を考えておく(バックアップを取る、予備を用意するなど)
「ミスそのものより『またやっちゃうかも』という不安が頭を占め、それがさらなるミスを生む悪循環になりがちです。『起きたらどうしよう』ではなく『起きた後どうするか』を考えると心に余裕ができますよ」という言葉に、多くの参加者が救われた表情を見せていました。
今回のイベントは、発達障害の特性を「困りごと」として捉えるだけでなく、「自分に合った仕組みづくり」の大切さを学ぶ貴重な機会となりました。
KABAGリュックをはじめとする「道具の力」を借りながら、完璧でなくても日々を楽しく過ごすヒントが満載のイベントでした。次回のイベント情報もお楽しみに!
開催日時: 2025年4月12日(土曜日)13:30~16:30
会場: コンファレンススクエア エムプラス(丸の内南口)
講師紹介
南 和行(みなみ かずゆき)
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学第一文学部心理学専修卒業後、米国ミシガン州立大学大学院カウンセリング心理学科修士課程修了。発達障害専門の「カウンセリングルームすのわ」代表カウンセラー。ADHD・トラウマの改善を専門とし、当事者目線で実践的なサポート方法を提供している。
西原 三葉(にしはら みわ)
整理収納アドバイザー・AUBE代表。自身もADHD当事者として「片づけられない悩み」と向き合い、2018年に片付けコンサルティング事業AUBEを立ち上げ。『「ADHD」の整理収納アドバイザーが自分の体験をふまえて教える!「片づけられない......」をあきらめない!』(主婦と生活社)著者。「ADHDタイプの片づけ講座」を定期開催し、1,000件以上の片付け支援実績を持つ。
中島 美鈴(なかしま みすず)
臨床心理士・公認心理師・心理学博士(九州大学)。時間管理とADHDの認知行動療法の専門家。肥前精神医療センターなどの勤務を経て、現在は中島心理相談所所長。『ADHDタイプの大人のための時間管理ワークブック』(星和書店)など著書多数。NHKあさイチに時間管理の専門家として出演経験もあり、「仕組みで解決、根性×」をモットーにADHDの生きやすさをサポートしている。